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by は「そのために」 [英語の表現]

翻訳をしている中で気付いたことの1つ。

I go to school by bus.

この文、普通は「私はバスで学校に行きます」と訳す。ただし、「私は学校に行くためにバスに乗る」とも訳せる。この文に限って言えば、「私は学校に行くためにバスに乗る」では不自然かもしれないが、「行くために」と読んだ方が原文に近い順序で意味を読み取っていることになる。

今は学校でどう教えられているか知らないが、私の場合は「英文は後ろから訳す」と教え込まれた気がする。あるいは巷にあふれる文法書にそう書かれていたのかもしれない。いずれにせよ、「英文は後ろから訳す」は日本人の間で広く信じられていると思う。

文学作品として英文を翻訳する場合には、「後ろから訳す」のも良いかもしれない。しかし実務で大量の英文を読む場合、いやそれ以上に会話の場合には、「前から理解する」のが大原則である。英語の場合、著者(または会話の相手)は重要なことを先に言い、その補足を後に言う。従って読む側としては(または聞き取る側としては)先に言われたことを先に理解し、後から言われたことを後から理解した方が楽である。「後ろから訳す」と思い込んでいると、後から言われることを理解しようとしているうちに先に言われた重要なことを忘れてしまい、結局全体もわからなくなる。特に会話の場合、(翻訳をするわけでもないのに)「後ろから訳す」と思い込んでいると、最初に言われた重要なことを聞き逃してしまう。

「前から理解する」原則に従うと、by を「そのために」と訳した方が適切な場合が多いことに気付く。短い文なら「によって」とした方が読みやすくなることが多いが、長文では「そのために」とした方が読みやすくなることがよくある。以下はその例。地図データとGUIに関する文から抜粋したもの。
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例 1:
These coordinates can come from JavaScript, or you can provide them. You request a map by assembling the request and posting it to the server, loading it directly into a <div> element.

これらの座標はJavaScriptから得られる場合もあり、あるいは皆さんが座標を指定することもできます。地図を要求するためには、その地図リクエストを組み立ててサーバーに POST 送信し、その地図を <div> 要素に直接ロードします。
by を「によって」と訳すと第2文は次のようになり、主語があいまいになる。

その地図リクエストを組み立ててサーバーに POST 送信し、その地図を <div> 要素に直接ロードすることによって地図を要求します。
例 2:
If the user draws a tall, narrow box, it will happily oblige and give him exactly the rectangle asked for at the width and height asked for, leading to a distorted, squashed, or flattened image. You can prevent this by making sure the scale is the same (or close) in both the x and y directions

例えば縦長の細いボックスをユーザーが描画すると、(それ)は忠実に要求どおりの幅と高さの四角形を返します。そのため、歪んだ画像や、縦や横につぶれた画像になってしまう場合があります。それを防ぐためには、スケールが x 方向と y 方向の両方で同じである (または近い) ことを確認する必要があります。
by を「によって」と訳すと第2文は次のようになり、第1文とのつながりが弱くなる。

スケールが x 方向と y 方向の両方で同じである (または近い) ことを確認することにより、この問題を防ぐことができます。

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もっとも、byは「によって」と訳すもの、と思い込んでいる人は多いので、上のような訳し方が不適切とされる場合があるのも現実。どちらを良しとするかは up to you と言えるでしょう。

 

ホームページhttp://www002.upp.so-net.ne.jp/yt-hon/もご覧ください。 


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