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なつかしい、「ウサギ小屋」 [Economist で知る海外の話題]

久々にEconomistの記事より。

今から20年ほど前になるだろうか。EC(欧州共同体)が作成した報告書に「日本人はウサギ小屋のような家に住んでいる」 との記述がある、とマスコミで報道され、日本人への批判として大きな話題になった。

マスコミでは日本批判として取り上げられたが、実は誤訳にすぎないとか、批判の意味で書かれたわけではない、というような意見も聞いたように思う。私自身は実際にどんな記述なのかを見たわけではないので、何が本当だったのかはよく知らない。とはいえ、大きな話題になったこと、「ウサギ小屋」が rabbit hutch だということだけは明確に覚えている。

その後、「ウサギ小屋」を思い出す機会もなかったのだが、2014/08/9 日版の Economistを読んでいたら、その rabbit hutch が出てきた。The British diaspora / And don’t come back (イギリス人ディアスポラ / そして返ってこない) という標題の記事。全体としての内容は、イギリスでは若い有能な人達が国を去る場合が多く、また国外に多数のイギリス人がいるにもかかわらず、国として彼らを結び付け、有効に活用する政策をとっていない、というもの。

導入部の終わりあたりに rabbit hutch が出てくる。その部分が下記。

High housing costs help to drive young folk abroad. For the monthly rent
on a rabbit hutch anywhere near central London, graduates live grandly
elsewhere. 

若い人達が海外に行ってしまう一因は住宅費用の高さにある。大学卒業生であれば、ロンドン中心部に近いどこかのウサギ小屋(のような小さな家やアパート)に住む場合の毎月の家賃で、国外ならば広大な家に住むことができる。

rabbit hutch が単なる狭さを意味するのか、卑下する意味が込められているのかはわからないが、実際の文章の中に使われているを見るのは初めてなので、私にとっては新鮮だった。

この記事には別の発見もあった。最初の方に athlete という単語が出てくる。普通は「スポーツ選手」という意味だが、ここでは「有能な人材」という意味らしい。単に athlete を辞書を引いてもスポーツ選手を意味する説明しか出てこないが、よく調べると corporate athlete という表現もあることに気付く。記事そのものはあまり面白くはなかったが、新しい表現を知ったのは収穫だった。

試しに、rabbit hutch が出てくるところまで、この記事を対訳で紹介しておく。

WHEN British politicians talk about winning the “global economic race” (as they often do) they have athletes like Gregor Wilson in mind. Mr Wilson taught himself to code as a child. He started and built his first company while at university and sold it on graduating. His second venture, a software firm, is booming and will soon be ready to take on more staff. He is also preparing to leave Britain for good.

イギリスの政治家が「世界的な経済競争」における勝利、と言う場合(彼らはしばしばそう発言する)、彼らはグレゴール・ウィルソンのような有能な人材を思い浮かべている。ウィルソン氏は子供の時にコーディングを独学で習得した。彼は大学生の時に彼の最初の会社を設立・創業し、卒業時にその会社を売却した。彼が設立した2番目の会社であるソフトウエア会社は大発展しており、近々さらに人を雇う予定だ。そして彼は、永遠にイギリスを去る準備をしている。

In the popular imagination, British expats are leathery retirees in the Mediterranean. But from 2006 onwards the weak pound, the bursting of Spain’s property bubble and rising taxes in France made the costas less attractive. The number of old Britons emigrating annually has more than halved since then. Dean Blackburn, head of HSBC Expat, part of the high-street bank, says that a different breed of emigrant is now on the march: the ambitious graduate bound for North America or Asia.

普通、海外に移り住むイギリス人というと、年老いて引退し、地中海沿岸に住む人達、と思われている。しかし2006年以降は、ポンドの下落、スペインの不動産バブル崩壊、フランスでの課税強化により、地中海沿岸は以前ほど魅力がなくなっている。2006年以降、海外に移り住む年老いたイギリス人の年間総数は半減している。大手銀行の一部門であるHSBC Expatのヘッド、ディーン・ブラックバーン氏は、従来とは異なる種類の人達が海外に移り住むようになっており、大志を抱く大学卒業生は北米やアジアを指している、と言う。

The sharpest rise has been among those moving to the glittering East (see chart). Mr Wilson will build his business in Hong Kong. The web, along with the reach of the English language and the cachet of a British degree, gives young people like him opportunities undreamed-of by their parents’ generation. They are also untethered for longer: on average, they buy a house and form a family later in life than did previous generations. Figures from the Office for National Statistics show that, since the eve of the economic crisis, emigration is down by 19% overall but up by 8% among 15- to 24-year-olds.

最も急増しているのは、輝かしい東洋に行く人達である(グラフを参照)。ウィルソン氏は香港で事業を始めるつもりだ。英語とイギリスの学位が世界で通用することに加え、ウェブが大きく発展したことにより、彼のような若者は彼らの親世代が夢見ることさえできなかった機会を手にできるようになっている。また彼らは独身でいる期間も長くなっており、平均的に言って、彼らが家を買って家庭を持つ年齢は従来の世代の場合よりも高くなっている。国家統計局が発表した数字によると、あの経済危機の直前から、イギリス外に移住する人は全体としては19%下がっているが、15歳から24歳までの人に限ると8%上昇している。

High housing costs help to drive young folk abroad. For the monthly rent on a rabbit hutch anywhere near central London, graduates live grandly elsewhere. “We can afford to travel around Australia, rent an apartment with a sea view and save some money,” explains Emma, a publisher and recent Oxford graduate who moved to Melbourne last year. Those with advanced degrees are especially likely to leave for countries where pay and research facilities are better.

若い人達が海外に行ってしまう一因は住宅費用の高さにある。大学卒業生であれば、ロンドン中心部に近いどこかのウサギ小屋(のような小さな家やアパート)に住む場合の毎月の家賃で、国外ならば広大な家に住むことができる。最近オックスフォード大学を卒業して出版に携わり、昨年メルボルンに移ったエンマは、「オーストラリア周辺のあちこちを旅行し、海が見えるアパートに住み、少しばかり貯金もできる」と言う。こうした高学歴の人達は特に、イギリスよりも給料が高く研究施設が優れた国々に行ってしまうことが多い。

 


ホームページ もご覧ください。

 


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